ノウハウ 【第1回】関係者が多く、付随業務もたくさん。なぜ「契約マネジメント」が必要なのか?
更新日:2024年03月8日
投稿日:2020年06月1日
【第1回】関係者が多く、付随業務もたくさん。なぜ「契約マネジメント」が必要なのか?
※本記事は朝日インタラクティブの運営するWebメディア/サービスTechRepublic Japan(テックリパブリック、テクリパ)に、2020年1月16日に掲載された、弊社寄稿原稿の転載です(運営元の朝日インタラクティブより承諾を得て掲載しています)。
多くの場面で必要になってくる「契約」。企業活動の全てに関係しているといっても過言ではありません。
企業が売り上げを伸ばしたり、ヒト、モノ、カネ、情報といったリソースを得たりするには、従業員や社員、取引先、提携先…など色々な人と取引する必要があります。そして、それら全ては「契約」で成り立っています。
「契約」というと、連想されるのは「契約書」という“物”でしょう。たしかにそれも正しいです。重要かつ本質的に言うと、契約には3つの要素が存在します。
【第2回】ライフサイクルで考える「契約マネジメント」ーリーガルテック先進国の現在
【第3回】契約を軸に事業の速度を上げるー「契約マネジメント」に成功した3社の場合
【第4回】契約マネジメントの始め方ープロジェクトとして契約を一元管理するメリット
1.ライフサイクル
契約には、契約書という「点」ではなく、時間軸に沿った「線」の要素があり、締結前の交渉から始まり、契約書ドラフトを修正して、ようやく締結することができます。
そして、締結して終わりではなく、内容に沿って業務を遂行し、権利を実行したり義務を履行したりする必要があります。さらに、継続的な取引であれば、契約の更新や内容変更も発生し、様々な原因によって終了するまで続きます。
契約ごとにライフサイクルが存在する
このように、「契約」には時間軸に沿ったライフサイクルの要素があるのです。
2.関連契約
契約は、一本の線にとどまらず、それに関連する契約が枝葉のように紐付くことがよくあります。これが「関連契約」という要素です。
例えば、自分で家を借りる場合、物件を借りるための賃貸借契約だけでなく、家賃保証をつけるための保証会社との契約や、保険会社との火災保険契約なども必要になります。
付随する契約が発生する
これらの契約は、賃貸借契約を結ぶ際に付随して結ばれる必要があり、両者はお互いに関連し、影響し合う関係にあると言えます。これが「関連契約」です。
企業では、取引先との取引を行う際、取引の基本的な内容を定めた「基本契約」をまず結び、その後、一つ一つの取引を別の個別契約(個別契約書、受発注書などで行うやりとり)で結ぶことがよく行われます。
これも、基本契約が「幹」で、個別契約が「枝葉」のように付いて一本の大きな木を形作っていく、「関連契約」の一例です。
また、取引契約を結ぶ前には、秘密保持契約(Non Disclosure Agreement:NDA)や反社会的勢力排除の覚書を結ぶことがよくあります。これもまた「関連契約」です。
このように、契約は一本だけでなく、同時に複数本が並行して進行し、相互に影響し合うことがよくあります。
3.関連業務
相手先との交渉から始まる契約業務は、法務担当者による契約書のドラフトチェックや、経理・財務担当による売り上げや経費の管理など、さまざまな部署や関係者が関わります。
つまり、一つの契約に対しても、その契約に関連して多岐にわたる「関連業務」が生じるのです。
部署などをまたぐ可能性が高い
「契約と言えば契約書、契約書と言えば法務」という連想から、契約管理は法務部門の仕事だけというイメージが広まっています。しかし、企業内の誰もが無意識のうちに何らかの「契約」にかかわりながら業務を遂行しています。
部署横断で発生する契約まわりの課題
では、「契約」がこれらの本質的な要素を備えていると考えたときに、日本企業は契約まわりのどのような課題を抱えているのでしょうか。
もちろん、抱える課題は企業によって様々ですが、大別すると3つに分けることができます。
1.部署間の連携が取りにくい
企業には様々な部署が存在します。
大きな企業ほど組織管理の体制は縦割りになりがちで、部署間でのやり取りが円滑にいかないことがあります。その結果、他部署の担当者が現在どの業務に取り組んでいるのか把握しづらい、という問題が生じることもあります。
部署同士の問題はさらに以下の3つに細分化できます。
Ⅰ.一回のやり取りに時間がかかる
一つ目は、部署間でコミュニケーションが発生すると、一回のやり取りに時間がかかることです。
例えば、事業担当から法務宛に相談やレビュー依頼がある場合、依頼内容について提供してもらえる情報が不十分であったり、追加の情報を要求しなければならないことがあります。その際、担当者が手が離せない、メールの返信が遅いなど、様々な要因によってやり取りに時間がかかってしまうことがあります。
Ⅱ.契約や取引の「経緯」が見えない
二つ目は、契約や取引の「経緯」が見えないということです。
例えば、契約書ドラフトをレビューするとき、法務としては、ある条文についてどのような条件交渉があったのか、何を意図して条文を修正しているのか、などの「経緯」がないとレビューをすることができません。
情報が不足したままレビューが行われると、後に取引で問題が生じたときに、契約書でチェックしておくべき条項のチェックが漏れているために、リスクを負う危険性が高まります。
このような情報は往々にしてバラバラに散らばっており、事業担当者に確認を求めたり、メール等のやり取りの履歴をひとつひとつさかのぼっていったりする必要があります。
Ⅲ.誰も契約の全体像を把握していない
三つ目は、契約の全体像を誰も把握していないということです。契約には期限更新や終了、関連する契約や業務があり、非常に複雑化しています。
したがって、その全体像を把握するのは非常に困難であり、権利や義務の抜け漏れが生じるリスクが高まります。
2.契約書の管理が不充分
企業によって契約書の管理方法は様々です。
しっかり管理体制を整えている企業もある一方で、契約書はExcelなどの台帳に管理番号を記入し、原本をキャビネットや倉庫で保管しているという企業もあります。
管理体制が不充分だと、契約更新の期限を逃してしまったり、更新や内容変更のときになかなか原本を見つけ出せず、業務に滞りが生じてしまったりします。
それによって、企業の貴重なリソースを無駄な時間に割くことにもつながります。
3.業務が属人化してしまう
特定の業務を担当するのは、通常特定の個人が行います。その結果、その業務に関する知識や経験は、その担当者に集中して蓄積されていきます。一方で、若手や他の社員にはそのような知識や経験を得る機会が限られるため、彼らが成長し、活躍するのが難しくなることがあります。
これにより、契約に関連する業務は特定の個人に依存しやすくなり、その人が退職してしまうと分からなくなってしまう「属人化」の問題が生じることがあります。
契約全体の管理をするという考え方、それが「契約マネジメント」
このように、「契約業務を行わない企業」は存在しないにもかかわらず、契約に関する課題は山積みです。
実は、契約を適切に管理できていないことで企業の売り上げに影響したり、貴重なリソースを失ったりすることにもつながります。
複雑な「契約」の全体を適切に管理することで、企業が事業を滑らかに推進することができる環境を整えていく考え方が「契約マネジメント」です。
次回は、契約マネジメントの中身に迫りながら、日本企業との相性、すでにトレンドが来ているアメリカのリーガルテック市場における契約マネジメントの発展などを見ていきます。
【第2回】ライフサイクルで考える「契約マネジメント」ーリーガルテック先進国の現在
【第3回】契約を軸に事業の速度を上げるー「契約マネジメント」に成功した3社の場合
【第4回】契約マネジメントの始め方ープロジェクトとして契約を一元管理するメリット
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